CCA HM20 1DD+7BAのハイブリッドイヤホン

今回ご紹介するのはこちら。CCA HM20。
7mmの1DD+7BAという構成。久々のモリモリハイブリッドイヤホンです。
qdc pin仕様でフェイスプレートは亜鉛合金。それ以外は普通の樹脂ボディ。
フェイスプレートは結構厚みがある分、重さの重心が背中側に寄っています。
ノズルは短めですが根本の盛り上がりがある分総合的には結構長めな部類。
角度がかなり深いです。
イヤーピースは小さめのもので奥まで入れてもボディが気持ち浮いてる感覚でした。

特徴的なフェイスプレートの穴は半開放型と言っても良いガッツリな数。
メタルメッシュでチリゴミは入らないと思いますがZAX等と同じように水はちょっと怖いですね。
このベントが音質にどんな影響を与えているのか楽しみなところ。
樹脂ボディ側にはベントはありませんでした。
フェイスプレート側のベントに割り切る仕様はまるでヘッドホン。
今作では音導管という、少し高めのクラスのイヤホンに見られる構造を採用しており
今までのKZ系ハイブリッドとは少し気合の入れ方が違う様子が見られます。
DDはまだしもBAは本来この音導管を採用するようなものらしいですね。

おわかりいただけただろうか
音質はKZ系のハイブリッドが行き着いたドンシャリの理想形。
TRN VX PROが価格帯的にも構成的にも近く、ライバルに当たるのかなと個人的に思ってますが
どういった方向性の違いがあるのか比べつつレビューしたいと思います。

低音はサブベースからミドルまでかなりどっしりとした量感。
ポップス等でバランスが崩壊するようなチューニングではありませんが
ライブ音源のベースやバスドラムが時折鼓膜をブルブルと震わせてきます。
久々に「イコライザ入ってないよな?」と確認するレベルの濃ゆいやつが出ました。
VXPROはカーボンナノチューブ仕様の10mmDD、それに比べHM20には7mm xun-7DD。
KZが多様する重低音をゴリっと出すタイプのDD それの最新アップグレード版が使われています。
VXPROもしっかりと出る方ですがソリッドな締まりのあるタイプで、ボワ付きは特になし。
それに対しHM20のそれは半開放的なベントのおかげかゴリっとした量感と深さがあるにも関わらず
他をマスクするようなボワ付きがあまりない。
映画、アニメを何本か見てたんですがアクションシーンのSEやBGMがホームシアターのサブウーファーレベルの
鼓膜に響くブルブルとした重低音が味わえます。
最近のイヤホンはどれも低音がしっかりと出ても
バランスが崩壊しない仕上がりになってるのが多すぎて良い意味で困る。

中高音は少し線が細いですが、これはKZらしいギラつきを程よく抑えた繊細さだと思いました。
パンチ力という意味では少し弱いんですがKZ ZAXで感じたような薄っぺらさではない。
恐らくこれが密閉型になっていたらもう少しキツく感じるKZらしいギラつきが
出ていたと思うんですが。
ホーン楽器やドラムのスネア、ギターのカッティング、どれもしっかりと低音から分離している。
フェイスプレートのベントによって半開放型になったことで
本来暴れん坊な中高音に落ち着きと空間的なゆとりが生まれたのかと。

個人的にKZシリーズだとZAXとZASが強く印象に残ってるんですが
ZAXは低音以外の音が薄くて物足りなく、ZASは逆に濃すぎてもうちょっとバランス良くなったら
中華イヤホン初心者にも勧めやすい機種になりそうだと思っていたので
HM20はそういう意味で理想のバランスを得た機種になったのでは。
お値段は多少張ってますが音導管という新しいシステムを導入しているあたり
今までのハイブリッドから頭一つ抜けた傑作機を作ろうという気合の片鱗を感じました。
とはいえ円高の影響もあるので、ドルで言えばZAS等と大差ないので
コストアップでどうこうというよりは、単純にレベルアップを目指した結果か。

TRN VX PROとの違いは主に「重低音の濃さ」。
低音は濃ければ濃いほど良いぞ!と思ってるならHM20だし、引き締まりが欲しいならVXPRO。
HM20の方がxun-7ドライバということもあり深く、柔らかいです。
VXPROはCNT仕様DDの締まりのある低音で、BAを8基も積みつつ密閉型にも関わらず
スムースで見通しの良い中高音。
HM20はゴリゴリの低音DDと7BAを半開放型のようにした筐体に納めることで
アクの強い低音と本来ギラつきの目立ったであろう中高音が
太さ、パンチ力を保ちつつ分離感のあるバランス。
音が強さを保っているせいでベントが多いにも関わらず抜け感はそうでもないですが、
音漏れは結構あるので外で使う方は注意。

私の好みで言えば装着感を含めて僅差でVXPROに軍配。
中高音は正直どちらも甲乙つけがたい。刺激はないけどクッキリと低音から分離して気持ちよく聴こえる。
VXPROの低音は物足りない、少し硬い。金属筐体の残響感が苦手。という人もいると思うので
低音にもう少し柔らかさ、深さが欲しいと思った人はHM20がオススメです。



総評
オススメな人:1万以下の予算で質の高いドンシャリがほしい方。
個人的好み度:10点満点中/9点(装着感だけいまいちだった)
完成度:10点満点中/10点 




EarFun Air Pro 3 ファームウェアアプデで大きく表情を変えた最新TWS

 

今回ご紹介するのはこちら。
EarFunの最新スティック型TWS EarFun Air Pro 3。
Free 2SからサウンドピーツのTWSとここ最近試してたTWSシリーズもこれで一旦終焉。
発売当初から品切れが続き、レビュー時点で再び復活した妙に大好評なEarFun Air Pro 3。
こちらも1万円以下にも関わらず質の高いノイズキャンセルや外部取り込み機能のある
いわゆるコスパに優れた最新モデル。
ドライバは1DDで11mmウールコンポジット振動板。
チタンやベリリウムコート系と違い繊維質な様子が商品画像から見て取れますが、
一体どのような影響を与えてるのか気になるところ。

大きなセールスポイントとしては
・Qualcommの最新チップQCC3071搭載
・LE Audioに今後対応予定(対応したスマートフォンが必要)
・マルチポイント接続対応
・単独でも長時間再生可能なバッテリー性能

ワイヤレス充電もいけちゃう

角笛イヤピもギリOK

LE Audioに関しては次世代の高音質なbluetooth音声規格。しかし私はiPhoneなので多分関係ないヤツ。
でも「次の製品からは搭載するよ」じゃなくて今後のアップデートで対応してくれるというのは嬉しいですね。
マルチポイントは私の環境の場合、PCで使っているBTA30 PROとiPhone同時に接続してくれます。
メインはBTA30 PROですがiPhoneにも接続済みなので前者の電源を切ればiPhoneですぐ使える。
いちいちペアリングし直すのは結構手間なので助かる機能。
再生時間は単独で最大9時間。ケースを含めれば最大45時間。
ちなみに充電ケースはワイヤレス充電対応してるのでいちいちケーブルを用意する手間が省ける。

ノイキャンはサウンドピーツと同じくかなり質が高い。
主に低音ががっつりと削られ、人の声や高めの音はかなり薄くなる。
オンにした時のホワイトノイズはサウンドピーツより少なく、再生する音楽への影響も小さく感じた。
外部取り込み機能はサウンドピーツよりも少ししっかりと人の声が聞こえるようになるが
やや強調が激しく、サーキュレーター等の音も結構な音量で取り込んでしまうので
状況によってはかえって人の声が聞き取りにくくなるかも。
レジでのやり取りは勿論普通に会話が成立するレベルに聞き取れるのでマイクの質が良いんでしょうね。


外装は結構シンプルなデザインで、タッチセンサー部分は微妙に窪んでいる為
センサー付近をよく触ってしまう自分でも誤動作がほぼ起きない。
ノズルはこの手のTWSとしては標準的なのだろうけど普段レビューしているイヤホンから
比べるとやはり短め。角笛等のイヤピもギリギリ装着は出来ますが
ケースへの収まりがちょっと悪くなります。
個人的に楕円形ノズルでないのは結構嬉しい。

音質に関しては専用アプリでファームウェアアップデートを強くオススメします。
発売直後はかなり低音が支配的に響くような音という評価が多く、
実際私もアップデートする前に少し試しましたがCapsule3 Proに比べても遜色ないくらい
低音が強めで、かつ他の音を食ってしまうくらいにボワ付きがあったので
アプリで調整するにしてもかなりの低音メイン機になっている印象でした。
アップデートをかけても低音は強いんですがアプデ前に比べかなりスッキリ目になり
中高音がグッとハッキリ出るようになります。
アップデートで正直かなり好みの音になりました。

サブベースからミドルベースまで結構濃い目。
締りや解像度は無線ということもあり有線に比べぼやけてはいますが必要十分。
中高音はウールコンポジット振動版の力なのか、こちらも少し柔らかめに刺さりなく鳴る印象。
パンチこそ弱めですが音場が広くスッキリと鳴るのでどんな曲でも気持ちよく聴けるバランス。
中低音の濃さと中高音の柔らかさと広がりが「こういうので良いんだよ」という塩梅。
迫力はあるけど不快感なピークがどこにも無い。妙に奥行きがあり、中高音の分離感は高め。
寒色系のようなクッキリとした解像度を求める人なら別の選択肢もあると思いますが、その辺はLE Audioの対応で今後また印象が変わっていくかも。

個人的に一番良かったのは低遅延モード。
今まで使ったTWSで劇的にスペックが高いというわけではないんだけど
機器相性か、一番違和感なくライブ動画は勿論FPSゲームもプレイできました。
他のTWSだと微妙に口ズレてる部分やゲームは正直厳しいという部分があり
結局有線を使うことになっていたのに
EarFun Air Pro 3ではじめて音楽からゲームまで不満無しで1日使い倒すことができました。
バッテリーが3時間以上使っても余裕で半分以上残ってるのも強い。
bluetooth5.3ともなるとかなり省電力になっているようですね。
ちなみに、低遅延モードはデフォルトだとアプリ側からしか設定出来ないので
アプリのコントロールのカスタマイズから設定しておくと便利。
私はL側タップ3回で切り替わるようにしました。

左右各々でカスタマイズ可能

アプリから直でも可能


1万円以下のTWSは選択肢がかなりあるのでハッキリいって見た目で選んでも良いんじゃない?と
思うくらいなのですがいくつか使った今だとEarFun Air Pro 3がベストになりました。
見た目は多少地味かもしれませんがそんなところ含めて
スタンダードに質の高いTWSに仕上がってると思います。





TANGZU Zetian Wu 武則天 14.5mm平面駆動ドライバ搭載 唯一無二のデザイン

 

今回ご紹介するのはこちら。TANGZU Zetian Wu 以下:武則天。
TANGZU Audioという中国王朝シリーズのイヤホンを既にいくつかリリースしているメーカーの
平面駆動イヤホンです。

0.78 2pin仕様で、樹脂ボディに金属製のフェイスプレート。
まず目を引くのがこの特徴的なフェイスプレート! 色味もそうですが模様もメーカーの拘りっぷりを感じ取れて
とても良いですね。印刷じゃなくてちゃんと刻印なんですよこれ。
S12は14.8mmでしたがこちらは0.3mm小さい平面駆動ドライバ。でもボディサイズはどちらかというとゴツメの部類です。
ノズルは短め。普段使ってるイヤピによっては違和感を感じてしまうかも。
根本の盛り上がりを入れるとそこまで装着感が浅いわけではなかったです。
本体も多少凹凸のあるデザインですがイヤピで固定する感じ。
ノズル自体は標準的な細さだけど奥まで入れると根本の盛り上がりがある分圧迫感強め。
個人的にはがっちりとハマって好みだけど長時間着けてると少し疲れる印象でした。



音質としてはウォームな重低音濃いめドンシャリ。
サブベースは平面駆動らしい締りはあるんですが量感が今まで聴いた中で一番エグい。
Z12よりも上に感じる。
サブウーファーのレベルを上げまくった時の鼓膜にブルっとくる重低音が出ます。
ミドルベースあたりは並なので楽曲によっては「そんな濃くないな」という印象を受けるかも知れませんが
間違いなく濃いイヤホンです。
それでも平面駆動の力か、広がりがあるにも関わらず中高音を阻害するようなブーミーさは無し。
平面駆動の低音はスピーカーで聴いてるような「面」の力が強くDDの音は「奥深さ」が強い印象ですが
武則天の低音に関してはDDに近い深さもある贅沢な音でした。
HIPHOP、R&Bを聴く人は低音酔いするかもしれない。

中高音はステージ感が並~気持ち広めな程度。しかし武則天には少し大きめなベントがバラけて4箇所もあるおかげか
こもってはおらず、S12程でないにしろ抜け感は結構しっかり目にある。
女性Voのサ行やシンセの音、ギターの高音はむしろ鋭い方でした。
上記のベントが低音の力強さにも関与してると思われますが、中高音にも良い効果を与えてます。
繊細さも上々。高音域に関しては他の音域の存在感に気持ち食われてますが遠くにいるだけで存在感はしっかりとあります。
あくまで主役は低音域にあると感じるイヤホンでした。

武則天に関してはheydayエディションという仕様が異なるモデルが発表されており
そちらはオールラウンドなバランスに仕上げていそうな印象。(今のところレビュー予定はなし)
平面駆動を試したいけどDDの低音域のような弾力性が無いとイマイチ合わないかもしれない。なんて人がいたら
武則天は非常にマッチすると思います。
何よりこの唯一無二のデザインは所有した時の満足感だけでもポイント高いと思います。
個人的にはS12Pro~Z12くらいの明るい寒色バランスのほうが好みに変わってしまったので武則天の濃さは少し合いませんでしたが
完成度は非常に高いイヤホンだと思います。


総評
オススメな人:ギラつきやシャリシャリ感メインの強い中高音に疲れてきた方。低音強めでウォームな平面駆動を求めてる方。
個人的好み度:10点満点中/7点
完成度:10点満点中/9点 




TKZK Ouranos CNTドライバ採用の1DDイヤホン

 

今回ご紹介するのはコチラ。
TKZKより10mmサイズのCNTダイナミックドライバ1発のイヤホン。Ouranosです。
Linsoulの販売ページはコチラ。
Ouranosってなんぞ?と思って調べたら読み方としてはウラノスで、大地の女神ガイアの子。らしいです。
画像検索したらムキムキのおじさんが出てきました。
0.78 2pin仕様でフェイスプレート含め非常に軽量な樹脂ボディ。
フェイスプレートには鉱石の結晶のような黒い長方形がいくつにも重なり合い、その中に
鈍く光る銅色がちりばめられています。
この部分は個体差があり、私のはL側だけ随分黒いパーツが少なく別物みたいに見えますね。
さり気なくシンプルに小さいメーカーロゴが印字されています。

Rの黒さに比べてL側の薄さが目立つ個性
ベントは2箇所あり、気持ち大きめに見えます。
ノズルだけは金属製。
ノズルの根本にある盛り上がりを含めると気持ち長めになっています。
そこ以外は1DDイヤホンらしく薄く、凹凸も小さな作りになっているので
耳への収まりが非常に良い感じ。
自分のように耳にしっかりはめ込みたい人にはぴったりだと思います。
ノズルが細いわけではないので多少圧迫感は出ますが痛みが出るようなものではありませんでした。



音質としては自然でバランスの良いドンシャリ。
自然さ、快適さ、豊かさを紹介ページで使うだけあり1DDにも関わらず
価格に見合う高品質なドンシャリだと思います。
直近だとTINHiFi C3も同じような感想でしたが、そちらとの比較も挟んでレビューしてみました。

サブベースは並ですがミドルベースのあたりは濃いめ。
沈むところはしっかり沈むし、ベースラインも腰が低く前にしっかりと押し出してきますが
CNTらしくボワつかずある程度の締まりがあります。
この辺りLCPであるC3はもっと弾力性のある低音域でした。

中高音はBAユニットを積んでいないにも関わらず、低音域とはしっかり分離して
ハッキリしたパンチとナチュラルな繊細さを併せ持っています。
女性Voや金管楽器の伸びも悪くなく、ドラムの金物も細かいニュアンスまで拾っています。
流石に金属的な残響やアタック感は出ませんがそれがOuranosのチューニングの目的っぽいですね。
ハイブリッドイヤホンの良くも悪くも頭の悪いパワーのあるバランスは
慣れてしまうと気持ち良いものですが聴き疲れてしまったり
曲のバランスが崩れて聴こえてしまうのも事実。

Ouranosは自然さを売りにしているだけあり、大型のシンプルなスピーカーを
大音量で鳴らしているときのような低音から高音域まで全体的に
パンチがありつつも一部の音を強調することなく嫌味のない音に仕上げていると感じました。
TKZKは以前にwaveという1DD+1BAイヤホンをレビューしましたがあれも
ハイブリッドながら誇張の少ない、でも気持ち良いツボは抑えてるような優秀イヤホンでしたね。

楽しくて色んな曲を聴きたくなっちゃう!というハイブリッド系のイヤホンも良いですが
こういう一度付けたらしばらく外したくなくなる心地よさのあるイヤホンも良い...。
waveに続き何故か手放せない地味に魅力のあるイヤホンに仕上がってます。
耳奥までしっかりと押し込んでるんですが、音圧上がってるのに
音の広がりはしっかりと確保できてるのが不思議。

同じ1DDでほぼ同じ価格帯のOuranosとC3。どちらもバランスは良いけど
低音域に締まりが欲しくて、全体的にナチュラルな方が良ければOuranos。
弾力強めの低音域と全体的にウォーム寄りな雰囲気が好みならC3。



総評
オススメな人:1DDで楽しく、バランスよく聴ける優秀なのがほしかった方。解像度重視ではない方。
個人的好み度:10点満点中/10点
完成度:10点満点中/10点 

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